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ラマン分光法による分子構造同定や物性評価

製品開発・品質

製品・原材料の成分分析
未知物質の同定

OUTLINE

サービス概要

ラマン分光法とは?

ラマン分光法は、試料にレーザ光を照射した際に発生するラマン散乱光を利用し、分子中の構造についての情報を得る手法です。

得られたラマンスペクトルより、化合物の定性、化学結合や官能基の推定、結晶構造の評価を行うことが出来ます。

FEATURES

特徴

01

レーザラマン分光光度計の特徴

  • FT-IRと同じく分子の振動を観測する分光法です。
  • 前処理が不要で試料をそのままの形で測定できます。溶液、粉末、結晶、気体状態での測定が可能です。
  • FT-IRに比べて水の影響を受けにくいため、水溶液を測定することができます。
  • 低波数領域の測定が可能であり、格子振動(結晶中の原子の振動)や重い原子間の振動について情報を得ることができます。
  • レーザ光を約1µmに絞って照射できるため、局所的な測定が可能です。
  • コンフォーカル機能により、非破壊で深さ方向の分析が可能です。
02

ラマン分光法でわかること

 測定して得られたラマンスペクトルより、試料について様々な情報を得ることができます。

・ピークの位置
分子の化学結合に由来しているため、化合物の定性や官能基の推定を行うことができます。
・ピークの半値幅
結晶性の試料であれば、結晶性が高いほど半値幅が狭くなります。
・ピーク位置のシフト
試料が歪んでいる場合にはピーク位置のシフトが見られます。

03

原理

 物質に光を照射すると、光と物質の相互作用により反射・屈折・吸収などのほかに散乱と呼ばれる現象が起こります。
散乱光のなかには入射した光と同じ波長の光が散乱されるレイリー散乱(弾性散乱)と、分子振動によって入射光とは異なる波長に散乱されるラマン散乱(非弾性散乱)があります。ラマン散乱光を分光し、得られたラマンスペクトルより、分子レベルの構造を解析する手法がラマン分光法です。

04

ラマン分光法(Raman) と 赤外分光法(FT-IR) との比較


ラマン分光法


赤外分光法
検出方法 ラマン散乱光 赤外吸収
分解能 約1μm 約10μm
前処理の有無 なし あり
透明材料中の試料 測定可能 測定不可
(透明材料で吸収が起こるため)
水溶液の測定 測定可能 測定不可
(中赤外領域では水の吸収が大きく出るため)
見やすい結合

振動に伴い分極率が変化
C=C、C≡C、S-Sなどに強い

振動に伴い双極子モーメントを誘起
O-H、N-H、C=Oなどに強い
ライブラリ数 数万種類 数十万種類
蛍光による妨害 あり なし
試料へのダメージ 破損の恐れあり
(レーザー光によって発熱するもの)
なし
05

マッピング測定

 レーザラマン分光光度計では、局所的な分析のほかにも試料ステージを走査させてマッピング測定を行うことが可能です。混在成分の空間分布の把握や、製品の欠陥調査など様々な用途に活用できます。

06

加熱ステージを用いたラマン測定

 専用の加熱ステージを組み合わせることで、室温~600℃の任意の温度で試料を加熱しながら測定を行うことができます。測定雰囲気も空気、アルゴン、窒素などを選択可能です。

[顕微鏡用加熱ステージ]
Linkam Scientific Instruments
型式:10033
温度範囲:40~600℃
最大試料サイズ:直径16mm×厚さ1.5mm
測定雰囲気:大気下、アルゴン、窒素

設備

レーザーラマン分光装置  ~日本分光 NRS-5500~

レーザーラマン分光光度計

レーザーラマン分光光度計

装置仕様
 光源(レーザー波長)  532nm, 785 nm
 回折格子  300, 600, 1800 gr/mm
 試料ステージ  XYZ自動ステージ(マッピング、深さ方向分析)、試料加熱ステージ(室温~600℃)
 倍率(対物レンズ)  ×5, ×20, ×100

主な用途

  • 異物の定性分析
  • 化合物半導体の結晶性評価
  • Si酸化膜の構造状態評価
  • 電極材料の性能評価
  • 半導体の応力評価
  • 炭素材料の結晶性評価

備考

【関連情報】
・技術情報 : in-situラマン測定による熱挙動観察

・技術情報 : ラマン分光法による多層材料の構造解析