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連載コラム『ティーブレイク』(23)

2025.03.31 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(23)

 

レジリエンスを高めよう!

 

 脳科学を研究されているある大学の先生曰く、教育に携わる関係者にとって3~4月は要注意の時期だそうです。進学や進級などの新しい環境に適応出来ず、引きこもり、心の病発症、自ら命を絶つなどを心配しないといけないそうです。このあたりは、学生だけでなく、社会人も同じであると思いますが、生きていく中でいろいろなストレスを受け心が折れることもあるでしょう。ただ同じストレスに晒されても心折れることなく自然に回復する人もいるわけですが、どうもその分かれ目はレジリエンスにあるそうです。

 レジリエンス(resilience)とは、心の抵抗力、ストレスからの回復力のことだそうですが、抵抗力と言っても鋼のような強さを示すのではなく、柳のようにしなやかに受け流す力を示すそうです。レジリエンスを構成する要素には、性格や相談相手の有無があるそうですが、個人の努力によって改善が可能な要素もあるとのことです。訓練で精神的回復力を改善できる要素は、①新奇性追求、②感情調整、③肯定的な未来志向の3項目であり、言い換えると、①新しいものへのチャレンジ、②感情のコントロール、③自己肯定感となります。
 その中で、例えば、①のチャレンジする気持ちを引き出すには、脳の線条体からドーパミンを出すことにより、やる気が出るそうです。ギャンブルでスリルを感じるとドーパミンが出て意欲が出るそうですが、それではあまりに危険で生活破綻しそうですので、日常の中で線条体を騙しドーパミンを出す方法があるそうです。それは、身近な日々の生活の中で小さな目標を設定し成功体験を積むことで達成感によりドーパミンが出ることでやる気になるそうです。なるほど、これならできそうですね。
 また、③の自己肯定感ですが、日本はアメリカや韓国などに比べ自己肯定感が低いそうです。他人と比較しがちで、人からの評価を過剰に気にする人は自己肯定感が低いそうです。あるがままの自分を認め、自分の中に価値判断基準があると安定した自己肯定感を持つことができるそうです。これも、なるほどというところで、高すぎても人間関係や社会でトラブルを起こしそうですね。

 レジリエンスを高める方法はいくつかあるそうですが、まずは現状の自分を確認する場を持つことができるかどうかが重要であるとのことです。要するに自分を客観視する、もうひとりの自分に自分を見つめさせることだそうです。現状分析や自己分析、これがなかなか難しく素直にできないですね。何やら、不適合や苦情に対し是正処置を実施する前に、現状把握や分析をしっかり行わないとその後の是正が効果的なものとならない我々の世界にもつながる考え方ですね。先生の話を聞きながら、我が身に置き換え、頷く事ばかりでした。

 4月は新年度となり、我々の世界でも異動、転勤、退職などいろいろな場面でストレスに晒されることになります。体や心に不調をきたさないように、日頃からレジリエンス、心の抵抗力を高めていきませんか。
鋼ではなく、柳のようにしなやかに。

 2025年3月24日  TTC参事  菊谷 彰