ひび割れコンクリートの塩素マッピング分析
2025.01.15 技術情報
EPMAを用いたマッピング分析では、試料の一定範囲を測定し、元素の濃度分布の高低を色分けして表示することができます。そのため、濃度分布を視覚的に捉えやすくなります。最大9cm角までの試料のマッピング分析が可能で、コンクリートや配管など特定元素の浸食度合を調べ、劣化状態の解析などに用いられます。
今回、クラックが入ったコンクリート供試体を作成しました。それを海水を模した3%NaCl溶液に3週間浸漬させ、コンクリート内部にどの程度塩素が入り込んでいるか検証しました。クラックを含むように5㎝×5㎝のサイズで切り出し、試料が崩れないようにアクリル樹脂に包埋後、乾式研磨で鏡面仕上げとし測定を行いました。
実際にマッピングをとった図を下記に示します。コンクリート内部の塩素の分布は、表面部で高くなっていることが分かります。さらに、白線で示したクラック部の周辺の濃度が高く、塩素がクラックから浸透し、コンクリート内部に広がっている様子が観察できます。
コンクリートの劣化原因として塩害が挙げられます。コンクリートの内部は、セメント部から多量の水酸化カルシウムが供給されるため非常に高いアルカリの状態に保たれています。これにより、内部の鉄筋は不導体被膜で覆われるため錆びることはありません。しかし、塩素が一定量を超えると被膜が破壊されます。そこへ表面から浸透した酸素や水分が触れることで腐食、錆びが始まります。鉄筋は錆びて膨張し、構造物にひび割れや剥がれを起こします。そこからさらに腐食因子が侵入しやすくなり、急速に劣化が進行します。