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連載コラム『ティーブレイク』(19)

2024.07.25 技術研究、コラム

連載コラム『ティーブレイク』(19)

 

ポジティブ心理の有効活用

 

 先日、何気なく目にした広告に惹かれ、ある講演会に参加しました。テーマは「ポジティブ心理学 ―幸せの作り方―」です。心理学というと病理モデルを基本とした学問で、どちらかというとネガティブなイメージがあり、ポジティブ心理が学問として成立するのか、また、幸せは個人の感情の問題であり、ポジティブな心理から幸せをつくり出すことができるのかなどの疑問を持ちながら聴講しました。

 ポジティブ心理学は、「人間にとって良いこととは何かをさがし、科学的な方法によって検証する」ということで、1998年から始まった新しい学問とのことでした。Well-being(幸せ・良い状態)は、個人、宗教、文化、社会によって異なり、西洋と東洋では文化差も大きく幸福度の尺度が異なるが、欧米でもアメリカ、ドイツ、フランスでは幸福感が異なるなど、いろいろ興味ある研究成果が発表されているようです。ポジティブ心理学は、今後、世界各国、民族、部族などで、さらなるデータ収集・解析が進み、新たな学説を世に出してくれるのではないかと楽しみな学問です。面白い話の連続であっという間に講演時間が過ぎてしまいましたが、講演の中で気になる話がありましたので紹介します。

 幸せを高めるには、心の仕組みを理解することが大切とのことで、その仕組みの一つに、「快楽順応」というのがあるそうです。人は、生じた変化に時間が経つと慣れてしまうため、徐々に感情がセットポイントに戻ってしまうことを快楽順応というそうです。例えば、新しい恋人ができた(人間関係)や新築の家を購入した(環境)ことで得たポジティブ感情は慣れとともに消失するということです。
 人が変化に直ぐに慣れるという機能は、これがあるからこそいろいろ困難な環境にも順応できることになり、大切な機能であると思いますが、慣れとともに幸せを感じなくなるので、幸せを失わないように、慣れてしまわないように工夫することで幸福感を高めることができるということでした。

 いや、その通りですね。あの時の感動、喜びはいつの間にかどこかに消え去り、現実を突きつけられ、日常に埋没してしまいます。これは、仕事でも同じで、変化を恐れず、慣れないように工夫することは重要な意味を持ちます。
 皆さんの組織においても、常に挑戦し、現状打破し続けなければ明日はない、入社時や昇進時の気持ちを忘れるなと、機会あるごとに職場や研修の場で指導しているのではないでしょうか。変化し続けることで得る喜び・幸せを目指し、ネガティブではなく常にポジティブに物事を捉え、挑戦し、変化を恐れないよう、各組織の中でいろいろな工夫を施しているのではないでしょうか。
 Well-beingやポジティブ心理は、学問の世界だけでなく、実社会においてもいろいろな研究ができそうですね。
 ちょっとした工夫で、自分の行動から幸せを作り出してみませんか。

 2024年7月8日  TTC参事  菊谷 彰