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ラマン分光法による多層材料の構造解析

2024.10.07 技術情報

 医療品や食品の包装に用いられるプラスチックには、耐久性や柔軟性、ガスバリア性などを有する多層フィルムが採用されています。このフィルムは異なる種類の樹脂を組み合わせて成型されており、樹脂の種類や厚さを変えることで、それぞれの樹脂が持つ機能性を組み合わせることができます。多層フィルムの層構造をFT-IRで調べるためには、通常、ミクロトームなどで切り出して断面を作成するといった前処理が必要となります。

 一方、共焦点光学系を採用しているラマン分光光度計では、深さ方向に焦点位置を変化させて測定することができ、前処理を必要とせずに測定を行うことが可能です。光源として可視光のレーザーを使用しているため、可視光を透過する透明な材料について、表面から内部にかけて焦点をずらしながら測定することで、材料の深さ方向のスペクトル変化を観察することができます。

 ここでは、食品包装に使用されているフィルムについてラマン分光法による測定事例を紹介します。市販のサラダチキンの包装材を試料として、測定点を表面から徐々に内部方向に変化させながらラマン測定を行いました。得られたラマンスペクトルより、一般的なプラスチックであるポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が含まれていることが分かりました。PP、PEそれぞれのラマンスペクトルを下図に示します。

 PPで見られる400 cm-1付近のピーク、PEで見られる2850 cm-1付近のピークについて注目し、試料の深さ方向に対してそれぞれピーク強度をプロットすると、下図のように視覚的に材料の分布を確認することが出来ます。このフィルムはPP、PEから成る多層構造であることが分かりました。

 このようにラマン分光法では深さ方向に測定点を変えることができるため、透明容器内の試料の測定や、製品内部の欠陥、異物などについても容易に測定を行うことが可能です。

 

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