連載コラム『ティーブレイク』(18)
2024.05.07 技術研究、コラム
ヒューマンエラー
仕事を行う中で、いろいろなミスが発生しますが、その理由として、「ヒューマンエラーだから仕方ないよね」、「人間、誰でもミスするよね」という回答がでてきます。そして「今後、気を付けます」で解決しようとします。
私も日常的にミスをしますし、確かに人間、誰でもミスをしますが、ヒューマンエラーをミスの原因としてよいのか悩むところです。
ミスに対する原因調査として関係者への聞取りを行いますが、じっくり話を聞いていくとミスをした本人は自分の判断が正しいと思い行動していたという場面によく遭遇します。
そんな折、ヒューマンエラーについて研究をされておられる、河野龍太郎氏の講演を聞く機会がありました。その講演の中で、「人は正しい(合理的)と判断して行動する」ものだと教わりました。この話は、私にとって非常に合点がいくものでした。
ミスをした本人は、「叱られたから今後気をつけます」とその場では回答しますが、「正しいと思って行動しているので、そのうちまた同じミスを繰り返すことになります」、また「何故ミスをした」と叱責したり、注意しても直らないということになります。人間、自分の経験にもとづいて行動・判断し、自分の見たいもの、聞きたいことだけを聞く傾向にあるとのことです。
作業指示されたけど、「時間がなく、忙しかった」、「自分の過去の経験から大丈夫だと思った」、その場の状況を客観的に見て判断することを避け、自分の行動をこじつけで正当化し原因究明を避けようとします。
こうして考えてみると、ヒューマンエラーは結果であり原因ではないので、必ず原因を究明し是正しないとなくならないということになります。
何故、正しいと判断したのか、大丈夫だと判断したのかを調査し、その判断に至る思考、状況、作業工程、作業そのものを正さないとミスはなくならない。
その対策としては、「わかりやすく・作業しやすくする」(色で識別、器具の配置を変える)、「気付かせる」(自分でチェック、別の人がチェック)、「やめる」(作業そのものを別の方法に変える、担当を交代させる)など、いろいろあります。
自分の行動、作業パターン、性格をよく考え、適切な対策を取り、ヒューマンエラーを失くし、お客様から安心・信頼される仕事を継続していくことが重要ではないかと思います。
皆さん、これを機会にヒューマンエラーと真正面から対峙してみてはいかがでしょうか。
2024年5月7日 TTC参事 菊谷 彰