in-situラマン測定による熱挙動観察
2024.03.25 技術情報
今回は、加熱ステージを用いたin-situラマン測定について事例を紹介します。ポリ塩化ビニル(PVC)を試料として、測定時の温度環境を40~200℃に変化させたときのラマンスペクトルを取得し、スペクトルの比較を行いました。以下にPVCの各温度におけるラマンスペクトルを示します。
PVCのラマンスペクトルの主なピーク
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PVCの40~200℃におけるラマンスペクトル(ν:伸縮振動)
600~700 cm-1付近の2本のピークはC-Cl伸縮振動に帰属されます。これらのピークは温度が上がるにつれて徐々にピーク強度が減少しており、200℃のスペクトルではピークがほとんど消失しています。
また、80℃以降のスペクトルでは1100 cm-1、1500 cm-1付近にピークが出現しています。これらのピークはそれぞれ=C-C=伸縮振動、-C=C-伸縮振動に帰属されます。温度が上がるにつれてそれぞれのピーク強度は大きくなり、200℃で最大となっています。
これらの結果より、PVCに熱を加えるとCl 、Hの脱離が起こり、それに伴いC=C二重結合が生成することによって、ポリエンに変化すると考えられます。加熱ステージを用いて各温度でのラマン測定を行うことによって、反応の前後だけでなくその過程を観察することが可能です。
当センターが所有する加熱ステージでは、ステージ温度を40~600℃までの範囲で任意に設定することができます。窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気に設定することも可能です。
このステージを用いてラマン測定を行うことにより、試料の熱挙動を観察することができます。加熱in-situラマン測定では他の熱分析とは異なり、分子の結合状態の変化を観察しているため、結晶構造の解析や熱劣化の評価を行うことができます。
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顕微鏡用加熱ステージ
Linkam Scientific Instruments
型式:10033
温度範囲:40~600℃
最大試料サイズ:直径16mm×厚さ1.5mm
測定雰囲気:大気下、アルゴン、窒素
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