連載コラム『ティーブレイク』(10)
2023.01.18 技術研究、コラム
「八百屋のオヤジは元気」って何?
年末年始、正月用品の買い出しに出かけられた方も多いと思いますが、八百屋や魚屋に出かけられた方はお見えでしょうか。最近は、スーパーマーケットやネット販売で食料品を求めたりするので、商店街もシャッター街となり、八百屋や魚屋で買い物をする機会は少ないかと思います。
しかし数少なくなった商店街に出向くと威勢のいいオヤジの掛け声についつい誘われ、八百屋や魚屋の店先で足を止めてしまう経験はありませんか。苦しく厳しい経営状態であると思われる八百屋や魚屋のオヤジは何故、あんなに威勢がよく元気なのか。
トヨタの方が、「八百屋のオヤジは何故、元気か」を「自工程完結」という言葉で説明されているのを聞いたことがあります。確かに、個人商店なので、仕入れから販売まで自分で管理でき、そして顔見知りの近所の顧客(多くは主婦層)をしっかり掴んでいるので毎日の献立までオヤジがアドバイスし、販売できる。なるほど、自工程完結ですね。
おばあちゃんやおばちゃんと丁々発止のやり取りをしながら仕入れた野菜や魚を売り、またある時は多く仕入れをしてしまった野菜や少し傷みが入りかけた果物を、一山いくらの販売方法でお客様と掛け合い漫才のような会話をしながら販売していくそのテクニックに思わず見入ってしまいます。このテクニックは正に対面販売、コミュニケーションのお手本で、職人の伝統芸能といってもよいのではないでしょうか。
仕入れ、販売工程を自己管理し、流暢なコミュニケーションでお客様の心を鷲掴みにし、財布までもコントロールするという昔ながらの商売の基本がそこにはあります。これを品質マネジメントとして捉えると、社会ニーズや顧客要求を見極めながら、検出された不具合や設計変更に経営者としてものの見事に対応(改善)するシステムとなるのでしょう。
我々、環境測定・調査業界でも、円滑な営業活動、確かな調査・分析作業、そして的確な工程・品質管理により、お客様に証明行為を行うという商売を行っていますが、自工程完結は重要なポイントかもしれないですね。
皆さん、どうでしょう。経営改善対策の一つとして、八百屋や魚屋への修行、いや研修を人材育成のプログラムとして検討してみてはいかがでしょうか。
2023年1月11日 TTC参与 菊谷 彰