連載コラム『ティーブレイク』(8)
2022.10.24 技術研究、コラム
目指せ、ラファエロ
最近、ラファエロという画家の話を聞く機会がありました。ラファエロは、皆さんご存知の通り世界的に有名なルネッサンス時代の芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び称される三大巨匠の一人です。
この時代の画家は、師匠の模倣から入り、著名な画家の絵を学びながら、自分の画風を築きあげたそうですが、ラファエロも師事した先生の模倣から入るとともに、ダ・ヴィンチの影響を大きく受けながら自らの画風を築き上げていったとのことです。なるほど日本でも職人の世界では昔から師匠の背中をみて仕事を覚えろという時代がありました。我々、環境調査や分析の世界でも、先輩や上司の指導のもと新人を育成していきますが、マニュアルや手順書より俺の仕事のやり方を見て覚えろ方式の指導は今でもあることから、妙に納得してしまいました。
もう一つ、聞き入ってしまった話にラファエロは古代ローマ時代の遺跡を丹念に調べ上げ、過去の遺跡に対し新たな建築物としての評価を見出し、ルネッサンス時代の建築様式に取り込んだそうです。正に世界最初の考古学者であるとともに、過去に学び新しいものを創り上げる優秀な建築家であったわけです。大変失礼な話、単なる画家として捉えていたラファエロは建築家でもあり、考古学者でもあったというところに感心してしまいました。こうした優秀な芸術家であったが故に、その後何百年もの間、人々に感動を与えるような絵画や建築物を遺すことができたのではないかと思います。
この話は、我々の業界に置き換えれば、過去から学び新たな時代を築く、公害に学び現代の環境問題に取り組む。上司、先輩、関係者からいろいろなものを吸収し、自分の技術としていく。環境問題に取り組む技術者は、調査や分析の技術・知識だけに満足していてはだめだ。化学だけでなく、物理学、工学、生物学、機械、安全衛生、法令など幅広い知識が必要であり、興味を持つこと。この姿勢は、時代や職業を超え、技術者に必要な事項ではないか。
いや、一人でこの話に感心していてはもったいない。皆さん、是非とも人材育成に活用してみませんか。過去を学び、幅広くいろいろなことに関心・興味を持ち、知識・技術を吸収し、独自の自分を創り上げていく。
これからは、新入社員にラファエロを目指せと教えてみようか?!
2022年10月24日 TTC参与 菊谷 彰